魚情報 その2

新鮮な魚の見分け方

釣り人の特権

新鮮な魚を見分けるのは、魚を美味しく食べるために一番大切なことです。でも、これは意外と難しい作業なのです。魚屋さんのように毎日魚を見ていれば、その変化を目の当たりにすることが出来ますが、我々消費者には、魚屋の店頭で、そのときに目の前にある魚が新鮮かどうかを判断しなければなりません。もし新しい魚と古い魚が並べてあれば、その両者を見比べて見分けるのは簡単ですが、比較するものが無いときに、どうやってその魚の鮮度を見分けるかがポイントなのです。

実は、魚屋さん以外で魚の鮮度を見分ける能力を持っているのが、我々釣り人です。何故なら、釣り人は、釣った瞬間の生きている魚から、自宅に持って帰って古くなっていく魚、釣りすぎて食べる前に痛んでしまった魚まで、連続的に見て、その変化を経験で知っているからです。泳いでいるところから見ているという意味では、魚市場以降しか見ていない魚屋さんよりも新鮮さに敏感かもしれませんね。

店頭での見分け方

昔から、魚の鮮度は目を見ろと言われます。目が濁ってどんよりしている魚は古く、目が透明でつやつやしている魚は新鮮というわけです。確かに、この見分け方も一つの方法です。多くの魚は、古くなると目の表面がへこみ、表面の膜に濁りが入り始めます。しかし、これだけで新鮮さを見分けるのは早計です。他に次のようなポイントを確認しましょう。

1.体表の色艶

やはり何と言っても最初の判断は体表面の色艶でしょう。魚の表面にはある程度ぬめりがあり、このぬめりが魚の体表面の乾燥を防いでいます。しかし魚が古くなってくると、このぬめりが取れ、体表面が乾燥を始めるので、体の色艶が失われていきます。この傾向が現れやすいのは、大きな鱗を持つボラやタイの仲間などです。魚を見て、「美しい」と思う魚が新鮮です。人間も食に対する本能を持っていますので、安全なものは美味しく見えるはず。人間の直感は結構重要な判断基準だと思います。

なお、カレイやシタビラメの仲間には、古くなるほどぬめりが多くなる種類もいます。魚が汚く見えるほどぬめりが出ていたら、それも要注意です。

2.えらの色、肉の色

えらは魚の保存状態をよく表します。その色は魚の血液の色を反映するので、新しいものほどえらの色が赤く鮮やかなのが普通です。パリの魚屋では、わざわざえらの色を見ることができるように、えら蓋を開けた状態で展示してある魚がいます。当然これらの魚のえらは赤くきれいなのですが、では、開いてない魚は?と疑いたくなります。もし買う前にえらの色が見れるなら、見せてもらうのも良いでしょう。

なお、切り身の魚は、肉の色を見るもの重要です。当然血合いの部分を見て、赤が鮮やかなものが新鮮なものです。

3.堅さ

魚も当然死後硬直をします。その硬直の時間は魚の種類と保存状態によって異なり、半日から2日程度です。その後魚は急激に柔らかくなります。特に青物(サバ、イワシ、アジなど)は、この体の堅さが鮮度を見分ける重要なポイントです。身が柔らかくなっているのは、触らなくてもよく見れば分かります。柔らかくなった青物は生食は出来ないと思ったほうがいいでしょう。

なお、もし魚を触れるなら、内臓の部分を触って軽く押してみるのも良い判断方法です。新しい魚の内臓はパンパンに張っていることが多いものです。展示状態で腹がへこんでいるような魚は、買わないほうが無難です。(マトウダイを除く)

4.保存状態

魚屋さんでの保存状態も、重要な判断基準です。特にイワシや小あじなどは、氷付けにして運ばれているので、どの程度長く展示されているかは周辺の氷の状態を見ることである程度分かります。特にイワシは鱗が取れやすい魚なので、鱗の残り具合からも保存期間が想像できます。痛みやすい青物は、店頭できちんと冷やされ、体表面に傷などが見られないものを、できるだけ朝早く入手するようにしましょう。(但し、余り朝早いと、前日の残りを掴まされることがあるので、要注意です。)

5.処理状態

パリの魚屋の魚は、基本的に何も処理されていない状態で展示されています。購入を店員に伝えると、はかりに載せて重さを量った後に処理するかどうかを聞いてくれ、鱗やえらわたを取り、身だけにしてくれることもあります。
ただし、ヒラメやカレイなどでは、展示時に既にえらわたが取られていることがあります。これは要注意です。えらわたは魚の鮮度を見る重要な場所で、つまり一番痛みやすい場所です。それを取り除かれているというのは、その部分が傷み始めたからと考える必要があります。もし買った魚を刺身で楽しみたいのならば、少なくとも魚はえらわた付きで持ち帰るようにしたいものです。

購入後のチェック

買った魚を刺身で食べられるかどうかは、持ち帰って最終判断を下します。ですから、よほど自信が無い限り、魚は処理を依頼せず、そのまま持ち帰るのが原則です。ただ、鱗だけは飛び散って台所を汚すことがあるので、鱗だけとってもらうのは一案かもしれません。

なお、単に新鮮ならよいというものではありません。例えばあまり新しい魚は、刺身や煮つけでは美味しくないこともあります。魚の状態を良く見て、一番美味しいときに、一番美味しい食べ方で食べるのがいいですね。

1.内蔵の張り

持ち帰った魚は、できるだけ早く、はらわたを抜きます。そのときに、えらの状態、内蔵の状態をよく確認します。特に内蔵は、腹を切ったときに飛び出てくるくらいがよく、切って開けてみたら腹の内側に張り付いていたというような状態は最悪です。はらわた全体が堅く、張りのある状態なら、その魚は新鮮だと言えるでしょう。

2.血の粘度

はらわたを抜いたり、頭を落としたりする際に、血だまりの血の状態を見るのも重要です。当然血液は魚が死ぬとゆっくりと固まり始め、少しずつ粘度が高くなります。頭を落とした時に血が流れ出ず、頭の付け根に茶色い塊があるようだと、その魚は相当古いと考える必要があります。えらを手でつまんで、茶色いどろっとした液体が出てくるのも要注意です。新鮮なえらなら、赤い血が出ます。

3.匂い

魚の種類にもよりますが、匂いも重要な判断材料の一つです。例えば、タラの仲間やサメの仲間は、古くなるとアンモニア臭を出すものがあります。カレイ、シタビラメなどは、古くなると生臭さが強くなります。タチウオや二枚貝も古くなるとにおいます。勿論、魚には元々色々な匂いがありますので、匂いだけで判断するのは無理ですが、重要な判断材料になることは間違いありません。

4..身の状態

そして最後は当然ながら、身の状態を見ます。サバやイワシなどは、体を持っただけでぐにゃっと曲がってしまうようなものは、刺身にはなりません。三枚に下ろすときに、見割れしやすいもの、色が悪いものなども要注意です。但し、身割れや色は魚固有の性質の方が強いので、これだけは、多くの魚をさばいて、経験を積むしかありません。いつもと違って色が悪いな、と分かるようになったら、しめたものです。

5..味

いまさら手遅れかもしれませんが・・・味も当然重要な判断基準です。一口食べて、怪しいなと思うようなら、すぐ食べるのを止めて煮付けにまわしましょう(笑)。新鮮な魚を見分ける最大の目的は、美味しい魚を一番美味しく食べるためですよね。美味しくないなら、別の食べ方を探すべきです。きっと美味しい食べ方が見つかりますよ。

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