Maquereau | サバ | スズキ目サバ科 | 年間通じ供給(春から秋) |
価格帯:3-5eur/kg |
日本の大衆魚の代表サバは、パリでも庶民の味方です。ほぼ一年中店頭で見られ、アジよりも購入者が多い一般的な魚となっています。
日本ではマサバとゴマサバの二種類を店頭で見ることが出来ますが、通常この二種を区別して売っている店はほとんどありません。パリでも店頭に並ぶサバには、Maquereau と、Maquereau espagnolの二種がいると思われるのですが、実は、このうち後者のMaquereau espagnol(スペインサバ)と名づけられたサバは、学名がScomber japonicusで、つまり、日本のマサバと完全同一種です。
Maquereau と、Maquereau espagnolは、体側の模様で見分けることが出来ます。パリには日本のゴマサバに当たるサバはいませんが、Maquereauは模様がゴマサバに近く、体側上部の虫食い模様が体側中央部で濃くなり、体側中央に黒斑点線を形成します。これに対しMaquereau espagnolは体側上部の虫食い模様は体側中央部にいくに従い薄くなり、体側中央部以下は白色になります。
店頭に出ているサバは、ほとんどがMaquereauで、Maquereau espagnolを見ることは滅多にありません。ジュネーブでは、このMaquereau espagnolがかなり売られており、サイズが大きいので脂も乗っており、美味しいサバです。
なお、パリではサバがLisetteの名で売られていることもあります。当初、このLisetteがマサバではないかと思ったのですが、どうも違うようです。
「フランス食の辞典」によると、ある特定の地方で捕れた小型のサバをLisetteと呼ぶようで、日本の関サバのようなもののようです。しかし、Maquereauは男性名詞で、Lisetteは女性名詞ですし、値段も変わらないところを見ると、単にサイズの小さいものをLisetteの名で売っているだけかもしれません。(辞書では30センチ以下のサバとなっています。)
さて、このサバ、塩焼きや味噌煮で美味しく食べることが出来るのは当然ですが、日本人としては、しめさばで楽しみたいところですね。その時に問題になるのが鮮度と寄生虫です。
まず、サバは鮮度が落ちやすく、保存状態が悪いと半日もしないうちに実が柔らかくなって骨からはがれ始めます。サバの生きぐされとはよく言ったもので、腹を割いたときに、わき腹の骨が身から簡単にはがれるようだと、そのサバは鮮度が落ちていると思ったほうが良いでしょう。保存状態の悪いサバは、当然しめ鯖には向きませんし、塩焼きでも味が落ちます。
もし鮮度の良いサバが手に入ったら、しめ鯖にして食べることもできます。しかし、その時に注意しなければならないのが寄生虫です。
サバにはアニサキスという線虫の仲間の寄生虫がかなりの確率で寄生しています。サバ以外にも、ニシン、スルメイカ、アンコウ、タラ、イワシ
、サケ、マス等様々な魚に寄生する虫ですが、サバやタラは圧倒的に感染している確率が高いようです。
この虫、元々イルカやクジラなど海性哺乳類で成熟する虫ですが、その幼生時代にサバなどの魚に寄生する性質をもっています。幼生時代は1〜2センチほどの白い糸状をしており、肉眼で見ることが出来ますので、サバのはらわたを出したときに、よく見てみましょう。通常は内臓に寄生しますが、魚が死ぬと徐々に肉質の方に移動するのもこの虫の特徴で、厄介なところです。
このアニサキスを生きたまま食べると、数時間後に激しい腹痛を感じることがあります。これが「胃アニサキス症」です。アニサキスは人間の体内では生きることが出来ないのですが、胃に入ったアニサキスは胃の壁を破って胃壁内に入り込もうとします。その時に起こるのがこの病気です。日本では年間2000人がこの病気で救急車をよんでいると言われ、刺身好きの日本人には宿命の寄生虫病の一つかもしれません。
アニサキスは火を通せば死滅するので、煮魚や焼魚で食べるときは、全く気にする必要はありません。しかし、単なる酢締めでは死にませんので、注意が必要です。まず、腹を開いたときに、内臓表面に虫がいないかどうか確認します。サバの場合、かなりの確率で虫がいるはずです。虫がいた場合はしめ鯖は諦め、火を通して食べるようにしましょう。虫がいなくても、内臓の状態が良くない場合は、既に虫が肉側に移動している可能性があります。特に内臓に接している腹身の部分は要注意です。
アニサキスは-20度で24時間冷凍すれば死滅するため、業務用にしめ鯖を作る場合、塩締め段階で冷凍する方法もありますが、家庭用の冷凍庫は-20度までは冷えないので、この方法を使うことは出来ません。
我々釣り人はサバを刺身で食べたいときには、釣ったその場で生きているうちに内臓を取り去り、虫がいないことを確認して、冷やして持ち帰ります。ともかく内臓を早く取り去ることが、この寄生虫被害を防止する最大のポイントだと言えるでしょう。
仏語名 | 英語名 | 日本名 | 学名 | 分布 | コメント |
Lisette | Mackerel | サバ | Scomber scombrus | 欧州沿岸 | Maquereauのうち、30p未満の小型のもの。 |
Maquereau | Mackerel | サバ | Scomber scombrus | 世界中 | 寄生虫が多く、生食は注意が必要。 |
Maquereau espagnol | Chub mackerel | マサバ | Scomber japonicus | 世界中の暖海 | 別名Billard。日本のマサバと同種。 |
スペインサバ(Maquereau espagnol)の名称で売られる日本のマサバ
マサバ(96/9/28 日立港第五埠頭)
ゴマサバ(99/9/11 鹿島港某堤)