館山釣り拠点のエネルギーシステム
今回は館山釣り拠点のエネルギーシステムをご紹介します。エネルギー研究は趣味なので、初期投資のお金はケチらず、でも年金生活に向けて日々のエネルギー支出をどこまで減らせるかを研究しています。いろいろと試行錯誤の日々です。
太陽光発電システム
今回、館山釣り拠点を整備するにあたり、別荘利用なので、できるだけランニングコストのかからない家を作ることにしました。拠点のランニングコストとしては、光熱費、税金、減価償却が主なものですが、このうち光熱費が一番工夫できそうです。
今回の新築に当たり、太陽光パネルを乗せることは最初から決めていました。家を施工していただいた楽ちん住宅さんからは、現在の買取価格だと住んで電気を使わないと、売電では元が取れませんよという暖かいアドバイスもいただいたのですが、元々太陽光を乗せて色々と実験するのが楽しみなので、元を取る気はありません。ちなみに、8年前に建てた自宅の買取価格は31円/kWhですが、館山釣り拠点の買取価格は16円/kWhと半額になる予定です。
ちなみに、太陽光発電は、東京都の補助金と設置条例による義務化もあって、現在申請が急増しているようで、経済産業省での認可が遅れているようです。私も3月に設置してすぐ申請したのに、7月になっても買取が始まりません。東電さんに毎日ただで電気を供給している状態です。東電さんにタダで電気を渡すのはちょっと悔しいので、滞在中の昼間はエアコン使い放題状態で電気を使ってます。困ったものだ!!
さて、前にも書きましたが、今回、太陽光パネルを載せるために屋根の角度も変えて頂きました。このため、屋根は約20度の傾斜角で南東141度を向いています。ここに図のように16枚のパネルを乗せており、前の家の陰になる早朝と、夏の17時以降は直射日光が当たらなくなりますが、おおむね一年間日照を受けることが可能になっています。

太陽光パネルは、Q-Cellsという会社の物を使うことにしました。業者さんは日本製も含め、他のメーカーも扱っていたのですが、自宅もQ-Cellsを使っているので、情報を収集する上でも同じ会社の方が良いという判断です。
我が家の屋根サイズに合わせ、パネルを載せて頂きます。パネルはQ.TRON M-G2.4+という430Wのパネルで、これを上の図のように16枚乗せるので、パネルの発電容量は430×16=6.88kWになります。Q-cellsのパワコンは5.5kWなので、全部使おうとするとパワコンが2台必要になりますが、それは勿体ないので、5.5kWのパワコン一台で過積載状態で使うという提案でした。
業者さんから提案されてきたのは、q-cellsの5.5kW出力の定番パワコンですが、折角の過積載ですし、将来的に蓄電池を追加することも想定していたので、あとから蓄電池が追加しやすいQ-Readyシステムのパワコンを導入することにしました。蓄電池とV2Hシステムの追加ができるニチコン系のパワコンです。パワコンの出力は5.9kWになりましたが、変換効率が96%になったのはちょっと残念です。
この太陽光設備の費用は、相場より結構高かったのですが、まあ、今回は建築工事と一体でしてもらった方がいいので、お願いすることにしました。個人的には趣味の研究用なので、釣りと同じで、あまり初期コストは気にしないことにしています。
業者さんからいただいた発電シミュレーションはこんな感じです。システム容量6.88kWで計算されているので、これは絶対に無理だと思います。さて、どうなるでしょうか・・・

ちなみに、邸内はオール電化ではなく、風呂やキッチンはプロパンガスにしました。太陽光発電を導入する場合、ガスを使わないオール電化にすることが多いのですが、夜間電力を使って毎日お湯を沸かすエコキュートは別荘利用には向いていません。10年たってFITの買取が終わった頃には、ほぼ毎日住んでいると思われるので、お日様エコキュートでも入れようかと思っています。ということで、お湯はガス給湯器にしましたので、台所のレンジもガスにしました。
蓄電池検討経緯
Q-Cellsでは、Q-Readyシステム専用の蓄電池を、2種類販売しています。7.7kWhのものと9.7kWhのものですが、どちらも高くて、とても買う気になりません。上の方にも書きましたが、東京都が太陽光、蓄電池、EVなどに大きな補助金を出しているので、今は業者が東京都売りに集中してて、特に補助金の対象となる蓄電池は補助金狙いで価格を下げないのです。国の補助金がモノの値段の低下を止める現象は良く知られており、太陽光発電の設置システム価格が下がらないのは国の補助金のせいだという論文もありますが、昨今は東京都の補助金が日本全体の蓄電池の値段を高止まりさせている状況です。東京都が東京都以外の全国民に迷惑をかけているなあ・・・と感じるのは私だけでしょうか。
と愚痴を言っても仕方がないので、蓄電池は太陽光システムとは別に、独立型で設置することにしました。補助金の対象でない蓄電池の価格はかなり下がっており、入手しやすいのです。
候補として考えたのは、以下の4つのパターンです。価格などは2024年秋頃の物です。
案① リョクエンハイブリッドインバータ、単相三線式
これが最も基本的で理想的なシステムです。ただ、このシステムを採用するなら、ソーラーパネルもこのハイブリッドインバータにつなぐべきですよね。でも、リョクエンさんのハイブリッドインバーターは買取に対応していないので、このインバーターを余剰買取を前提とした太陽光発電に使うことはできません。FITの買取が終わった後ならこのシステムがいいのですが。

案② リョクエンハイブリッドインバータ、単相二線式
200Vの蓄電池対応を諦めた安いシステムです。このシステムだと、200Vは蓄電池から出せないので、EV用の充電システムは蓄電池は使えません。でも、すごく安くできるので、魅力的な構成です。容量も電池を増やせば簡単に増えます。でも、①と同じで、やはりハイブリッドインバーターにソーラーパネルをつながないのは無駄に感じてしまいます。

案③ エコフロー デルタプロUltra
太陽光は別システムで設置し、独立蓄電池システムを組むなら、今はやりのポータブル電源(ポタ電)でよいと気づきました。そこで次に候補にしたのがこのシステムです。エコフロー社から発売された超巨大ポタ電で、蓄電池の容量は6kWあるので十分大きく、配線工事が楽です。まあ、ここまでするならポタ電にした意味がないかなあと思うほど価格は高くなります。

案④ エコフロー デルタプロ3
2024年秋の最新機種で、リーズナブルな価格で実現できそうです。発売当時はパススルー機能(後述)のタイマー制御がなかったので、スマートプラグを使ってパススルー機能の制御を行う予定でしたが、12月以降その機能が追加されたので、さらに使いやすくなりました。但し、この機種の場合、3600Whまでの機器が使えるのですが、単相三線のシステムにつながるようにするために、1800Wずつに2回線を分配する必要があり、家庭内での配線に工夫が必要です。当初、その情報があまり知られていなかったので、色々とトラブルがあったようです。

こうして考えると、ポタ電で組むよりハイブリッドインバーターを導入する方が圧倒的に安く済むのですが、前述の通り、太陽電池パネルはつながないのに、ハイブリッドインバーターを導入するのは、なんだか勿体ない気がします。
ここまで案を詰めた時点で、バナナ住宅さんとも相談してみたのですが、バナナ住宅さんははこういう追加工事はしたくないようで、あまり乗り気ではありません。電気のところは基本から変えたくないようですね。まあ、ローコスト住宅の業者さんを選んでいるので、工事の大半はパッケージ化されていますから、そこはやむを得ないところです。
と言って、自分で工事しようと思うと電気工事士の資格が必要です。まあ試験は簡単ですが、憶える内容が多いので面倒です。歳を取ったので、VVVFとかのコードの名前などを記憶するのは億劫に感じてしまいます。
ポタ電自作システムで対応
色々と検討を進めましたが、家の建築でお金を使ってしまったこともあり、今回はとりあえず電気工事はしないことにして、いわゆるポタ電を既存の家庭内に持ち込む形で試験的に使ってみることにしました。選んだのはEcoFlow社のデルタプロという3年前に発売された古い機種です。既に上記に書いたデルタプロ3という後継機種が出ているので、定価の半額以下で購入することができます。

定価は44万円ですが、安売りの時を狙えば20万円を切る価格で売っていることもありますし、通常でもポイントを換算すると22万円です。最近はkW当たりで計算するともっと安いポタ電も色々出ているので、今これを選ぶ価値は少ないと思いますが、私が選定したのは2024年の秋でしたので、一番安い機種として、これを選びました。
拡張ユニットも一台追加して、容量は3.6×2=7.2kWhになります。これだけあれば別荘の蓄電池としては十分です。
ポタ電の問題点
電力ロス
ポータブル電源、いわゆるポタ電で家庭内の蓄電池システムを構成する場合、最大の問題は様々なロスです。ポタ電はAC電源から入った電気を、ADコンバータで直流にして蓄電池を充電します。その際の変換効率は機種によって異なりますが、デルタプロの場合80%とされています。これに対して太陽光パネルからの入力場合は電圧変換だけなので、95%程度が期待できるのではないかと思いますが、この数字は公開されていないのでわかりません。

さらに蓄電した電力をAC電源にするためにDCコンバータを使いますが、その際の変換効率は使用する電力が小さいほど悪くなります。デルタプロの場合3000Wまで使えますが、その効率は70%から90% ということで、待機電力のような数Wしか使わないものだと30%がロスとして失われますから、こういったものにポタ電の電力を使うのは無駄が多いのです。結局系統電力をポタ電にためて、その電力で省電力の機器を動かすと、0.8(AC→DC)✖0.7(DC→AC)=0.56ですから、使える電力は元々の半分程度になってしまうということですね。
現在の拠点の電気代は第一段階で29円/kWhで、使わない場合は16円/kWhで売れるわけですから、16円で売れる電力を0.56倍の率でしか使えないとなると、夜間1kWの電力を使うために、売電価格28.57円分の電気を使うことになるので、系統から買っても、蓄電池に貯めて夜使っても、ほとんどコストは変わらないということになってしまいます。で、さらにデルタプロは、それ自体がAD、DA変換器とは別に33W程度の電力を消費しますので、この電気代まで考えると、蓄電池システムの電源を落とし、素直に夜も系統電力を使い、昼間の電気は全て16円で売る方がお得という計算になります。今年から始まる24円買取4年間というFIT制度になると、その4年間は、発電した電力は蓄電池に貯めずにそのまま売った方が絶対良いということになりますね。
ちなみに、デルタプロのお値段は拡張ユニット込みで40万円なので、10年使ったとして、一日100円、20年使ったとしても一日50円程度の減価償却になるので、この額以上に利益が出ないなら、停電対策を必要としないなら、FITが終わるまでは導入しない方が良いということになります。
結論として、ポタ電による系統電力消費シフトシステムは、卒FITまでは実用的ではなく、蓄電池を日常は使わず、災害対策としての蓄電池として、一旦満タンにした後は電源を落とし、そのまま保存するというのが一番賢い使い方ということですね。リン酸鉄リチウムバッテリーは三元系のリチウム電池に比べて自己放電が少ないので、この使い方で十分実用になります。
という結論ではあるのですが、エネルギー消費の工夫は趣味の一環ですし、前に書いたように今はまだ買取が始まっていないので、買取が始まるまでの当面の間は間違いなく昼間の電気をためて夜使った方がお得です。ということで、この間にいろいろな実験を進めてみるつもりです。
パススルー
ポタ電の特殊機能として、パススルー機能による制限も注意しておく必要があります。パススルー機能とは、充電中もポタ電が使えるように、充電中はコンセントから入った電力を充電用と使用用に分け、ポタ電を使用しているつもりでも、実際には家庭の系統AC電源の電気を使っている状態になることです。この機能はポタ電の電気を使用しながら充電ができる(ように見える)とっても便利な機能なのですが、夜間に蓄電池の電力を使いたくても、壁コンセントとポタ電をつないだままだと、系統AC電力を使ってしまうので、電力の節約にならないのです。元々ポタ電は、充電したいときに系統電源とつないで充電し、充電が終わったら系統電源から切り離して使うのが基本的な使い方ですから、系統電源が使えるなら、ロスがないまま系統電源を使った方が良いのは当たり前です。このため、今回導入した古い機種では、蓄電池の電力を使いたいときは、系統AC電源とポタ電との間にスイッチをかませて、系統AC電力を使わないように切る必要があります。
もう一つの問題は、パススルーを行っているときの電力容量の制限です。
系統電源からの充電は最大1500W(15A)までに制限されています。これは、家庭内のコンセントがその規格だからで、エアコン用のコンセントなどで20A(2kW)まで使えるコンセントが設置されている家もありますが、通常の系統電源はコンセント一つから1500Wまでしか取り出せません。
ですから、蓄電池への充電も系統電源からは最大1500Wしか入力できないようになっています。そして、パススルーで充電しながら外部に電力を供給している場合は、充電に使っている電力と、パススルーで外部に供給している電力の合計が1500W以内でなければなりません。今回使用するデルタプロは、電池からの出力を使う場合は3000Wまでの機器をつなぐことができるのですが、パススルーが働いている間は、1500W以上の機器をつなぐとエコフローのAC出力のブレーカーが落ちて、電力供給が止まってしまうのです。

ちなみに太陽光パネルをつないでDC充電をしているときにもパススルー機能は使えますが、その場合はDC→ACコンバーターを通るので、多分3000Wまで使えるのではないかと思いますが、それは実験できていないのでわかりません。

ちなみにデルタプロは、系統電源と、太陽光と、発電機の3つから同時に充電することもできるようです。私は発電機は持っていないのですが、系統電源の時差利用だけでは蓄電池の価値が殆どないことが分かったので、太陽光パネルを追加して少しでも電気代を下げる努力をしてみることにしました。太陽光パネルから、一日100円程度の電力を入手できれば、元が取れるかもしれません。
追加太陽光パネル
ということで、駐車場に追加で小規模な太陽光パネルを置いてみることにしました。スペースとしては駐車場に設置した物置小屋の上を使います。パネルはアマゾンで一番安く手に入った、ECO-WORTHY のソーラーパネル 195W X 4枚=780Wを使うことにしました。このパネル、私が以前買ったリョクエンの200Wパネルよりもサイズ的に20%近く小さいのに、発電容量はわずか5W小さいだけの195Wあることになっており、とても怪しいのですが、今回はなるべく小さめのパネルが欲しかったので、これにしました。

小屋の上に単管パイプで台を作り、その上にパネルを置きます。設置すると電気工事になりそうだったので、パネルは単に置いて紐で留めただけの状態です。今の夏至に近い時期は写真のような10度程度の角度で使い、秋分の日を過ぎたら角度を30度程度に変更したいと計画しています。夏の時期は台風が来る可能性もあるので、角度を付けたくないのです。

これをデルタプロにつないでみます。このパネルは、最大電圧20.2V、最大電流9.65A、解放電圧が24.5V、短絡電流が10.14Aなので、4枚を直列にすると、最大では98Vで10.14Aの電流が流れることになります。デルタプロの太陽光発電の入力が11~150V、15Aとなっているので、まずはこの直列接続でデルタプロにつないでみることにしました。
このパネルを設置した場所は玄関前の駐車場北側で、夏至に近い今だとパネル全体に日光が当たるのは9時半頃で、13:00頃には西側にある電柱の影がパネルにかかり始めます。直列でパネルを繋いでいると、どれかのパネルに少しでも影が掛かると急激に全体の電流量が落ちるので、9:30までと13:30以降は100W程度しか発電しません。全部の面に太陽光が当たっているときは、600W以上発電するので、まあまあ満足できるのですが、天気が良い日の四時間だけしか満足に発電しないのでは価値が低いですね。
この状態ではロスが大きいので、東側と西側の二枚ずつを直列にして、その2組を並列接続にしてデルタプロに入れることにしました。
パネルを2直列2並列にすると、電圧は解放電圧で49V、電流は最大20.28Aになるので、電流量がデルタプロの許容規格より大きくなります。この場合、デルタプロ側が15Aまでしか受け付けないので、実際には最大発電量は最大電圧である20.2V×2=40.4V、電流は15Aになりますから、780Wのパネルなのに最大でも606Wまでしか取り込めないことになります。その代わり、並列接続にしたことで、2枚全体に光が当たってればかなりの発電量があるので、直列接続より発電量が大きい時間が長くなります。実際、この接続にすると、朝夕の発電量が極めて大きくなり、全面に光が当たっているときの発電量は直列接続と比べても遜色ないので、この接続方式を採用することにしました。結局こちらも過積載ってことですね。
デルタプロには太陽光だけの蓄電量を記録する機能がないので、毎日どの程度蓄電に寄与しているかは分からないのですが、色々と計算してみると、平均して毎日2.3kW程度発電しているようですね。通常のパネルの期待発電量はパネルの出力の4倍なので、日陰の時間がある割には、それなりの蓄電貢献はしている感じです。2.3kWだと、66.7円かあ・・・・まあ、初期投資を忘れれば、一応プラスにはなりそうですが。
このシステムで買取が始まるまでは夜間電力使用ゼロを目指します。実際には電灯やトイレのウォシュレットなどは系統電源につながっているので、住んでる限り無理なんですけどね。完全に0にするには、冒頭に書いたような配電盤工事をして切り替えないとダメですね。
これで館山釣り拠点のエネルギー供給システムは完成です。次はホームオートメーションです。
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